混沌とした世の中で、自分の人生を生き抜くには新しい知識の吸収や思考が必要、その手段として読書が欠かせません。
しかしながら読書の時間を捻出するのが大変だったり、イマイチな本でお金も時間を潰すのも不毛ですし、出版されているタイトルが膨大すぎて、どれを読んだらいいかわからないということも多いでしょう。
そこで私のオススメ本に関する書評・本要約をブログ記事でお送りしていきます。
あなたの人生での「新しい気づき」や「考えを深める」機会としてお役に立てれば幸いです。
日常的に意識することなく仕掛けられている「プロパガンダ」
今回は消費行動および説得技法の専門家のアンソニー・プラトカニス、社会心理学者のエリオット・アロンソンによる「プロパガンダ:広告・政治宣伝のからくりを見抜く」をお送りします。
この本の読みどころとは?
かつてないほど洗礼された形で使用されている現代のプロパガンダテクニックを紐解き、
- プロパガンダにはどのようなテクニックがあるのか
- どうしたら不信感に陥ることなしにこれらに対抗することができるのか
- どうしたら無意識的にプロパガンダに誘導されるのではなく、意識的に判断できるようになるのか
を紹介しており「作り手側のプロパガンダテクニックの向上」「受け手側の判断スキルの向上」を習得することができます。
まだ読んだことがない場合は、ぜひ同時進行ででも精読しておきましょう。
プロパガンダとは?
Weblioの定義によると、プロパガンダ(propaganda)とは「意図をもって、特定の主義や思想に誘導する宣伝戦略」のことです。
大きな括りでは国家においての思想統制や政治活動、小さな括りでは宣伝広告や広報活動もプロパガンダになりますが、「政治的(戦略的という意味に近い)な意図を持つ宣伝」のことです。
日常生活の中の説得
現代のプロパガンダについて明らかになったこと
もちろんどんな商品というわけでは決してないが、以下のような結果を得やすいです。
- 商品がよく売れる広告の言葉は、「新しい」「素早い」「やさしい」「向上した」「いま」「突然」「驚くべき」「発表する」。
- スーパーマーケットでは、お客様の目の高さの棚に並べられた商品が最もよく売れます。(目の高さにある商品を100とした時に、腰の高さにある商品は74%、床に近い商品は、57%しか売れないらしいです)
- 動物、赤ん坊、セックスアピールを用いた広告商品がよく売れます。
- スーパーマーケットでは、通路の端やレジの近くに置かれた商品がよく売れます。1個500円の品を2個1000円にすると、商品価値を高めることにつながります。
説得力を増す方法
何かしらの理由をつけてお願いをすると、説得力が増すことが明らかになっています。
これは、よくよく考えると、無意味な理由になっていますが、このような無意味な理由でさえも説得力を増した結果が出たのです。
なので、誰かに何かをお願いする際には、理由をつけた方が承諾を得やすくなるのでおすすめです。
また、具体的な金額を伝えて頼むと説得力が増す例も取り上げられていました。
慈善募金にて、「100円を1枚ください」と言うよりも「17円寄付して下さい」の方が寄付金の集金率が2倍になりました。
キリが悪い数字を示すことで、相手に「何か意味があるのかな?」と連想させることができ、説得力が増すのではないかと考えられています。
いずれにしても人は理由があると弱いのです。
説得のお膳立て
説得力を増すために、広告では言葉の魔術を使うことが多いです。
例えば、
- 脂質25%ではなく、赤身75%と表示した方が消費者から好印象
- 冷凍食品であることを目立たなくするために、フレッシュフローズンと記載すると消費者から好印象
1つの物事を説明しようとすると、好印象な言葉とそうではない言葉が出てきます。
そうなった場合に、意味としては変わらないですが、好印象にうつる言葉を選択し、広告として打ち出しているのです。
伝達者の信憑性
何を紹介するとき、演説するとき、「誰がそれを伝えているか」が重要であることがわかっています。
例えば、CMで商品を紹介する際に起用されているのは、その分野の専門家ではなく、有名人です。
有名人の影響力を利用しているのです。好感があればあるほど、説得力を持つのです。
また、政治家のイメージ作りも同様です。例えば、インタビューをされた時に、あらかじめ、用意された質問に流暢に、自信を持って答えることで、視聴者からのイメージは良くなるでしょう。
例え政治的には評価されていなかったとしても、個人的人気で投票を集めることが可能になりつつあるのが現代の政治です。
そのため国民は広告などに騙されることなく、政治家の本質を見抜く必要性があります。
メッセージ
広告に含まれる論拠がたくさんあればあるほど、効果を発揮しやすいと言われています。
これはメッセージを読まれた場合だけでなく、いい加減に読まれたり、全く読まれない場合にも通用するのです。
人々がそのメッセージについて注意深く考えていない場合には、含まれる論拠の質に関係なく、長いメッセージを用いた方が説得力があると述べられています。
人間は無意識のうちに、「メッセージの長さは、メッセージの論拠の正しさに等しい」とう原則で判断しているのです。
感情にアピールする説得
人はあまりにも極端な恐怖が喚起されると、人は注意を払おうとしなくなります。そして、その恐怖から逃れる道を探すのです。
次の条件が揃ったとき、恐怖アピールは最も効果的になります。
- 人々に強い恐怖を与えること
- 恐怖が生み出す脅威を克服するための具体的な勧告を提供すること
- 推奨された行動が脅威を低減させるのに効果的であると知覚されること
- メッセージの受け手が、推奨された行動を遂行できると考えること
このような恐怖喚起を上手に取り込んでいるのが詐欺です。
相手に恐怖を煽り、商品を売りつけます。ここで学んだ内容を念頭に置いていただき、被害者にならないようにしてほしいです。
説得の戦略を打ち破るために
ある世論調査によると、圧倒的多数の成人が、テレビコマーシャルには真実でない主張が含まれていると考えています。
また教育レベルが高い人ほど懐疑的になり、懐疑的な人ほど説得への抵抗になると考えています。
このような結果から、疑っていれば、広告のメッセージに影響されることはないと思うかもしれませんが、そうでは ありません。
なぜならば、実際に説得から免れていると思うことと、免れていることは異なるからです。
その上で、何をすれば、説得から免れることができるのか次に示します。
- 説得する側は何を得るのかを考える。
- なぜこうした選択がこのような形で私に提示されているのかを考える。
- 他の選択肢はあるのか、こうした選択肢を提示する他の方法があるのかを考える。
- 推奨されている選択肢以外の選択肢を選ぶと、何が起こるか考える。
- 別の選択肢を支持する論点は何かを考える。
情報戦略が失敗するとき
情報戦略が失敗するときは、知性に訴えかける部分が大きくなったときです。
広告の作り手側は要点を絞り、スローガンやメッセージを国民が理解できるまで、CMや中吊り広告などあらゆる手段を使って、繰り返し訴え続けます。
この作り手側の思考やメッセージの背景・意図を読み解くことによって安易には騙されにくくなるでしょう。
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